くら寿司の『ビッくらポン!』が真似されない理由| 飲食が仕掛ける知財戦略を解説

回転寿司でお馴染みの「くら寿司」。
お皿を5枚食べるとガチャガチャが回せる、あの楽しい仕組みをご存知ですか?
実は、このガチャガチャシステムには特許戦略が隠されていました。
本記事では、くら寿司のビジネスモデル特許を切り口に、飲食店におけるビジネスモデル特許の重要性、そして経営者が知っておくべき知財戦略を徹底解説します。
目次
くら寿司のガチャガチャシステムとは
くら寿司では、お皿を5枚食べるごとに「ビッくらポン」というガチャガチャが回せる仕組みがあります。
このシステムは、お皿の枚数をカウントし、一定枚数に達すると自動的にガチャガチャが回って景品が出てくるという、システムと連動した仕組みです。
他の回転寿司チェーン、例えばスシローやはま寿司では、このようなシステムは導入されていません。
実は、くら寿司はこのビジネスモデルに対して特許出願を行っていました。
ビジネスモデル特許は取得できるのか?
ビジネスモデル自体のアイデアや構想だけでは、特許を取得することはできません。
しかし、そのビジネスモデルを実現する具体的なシステムや技術的な仕組みがあれば、ビジネスモデル特許として権利化できる可能性があります。
飲食業界のビジネスモデル特許の事例
飲食業界では、いくつかの有名なビジネスモデル特許があります。
いきなり!ステーキの事例
お客様の希望する量だけお肉をカットして提供するシステムについて、特許を取得しました。立食形式のテーブル、計量機、お客様を区別する札など、具体的なシステムとして特許化されています。
一蘭の事例
ラーメン店「一蘭」では、味集中カウンターの椅子にセンサーを設置し、お客様が着席しているかどうかを検知する仕組みについて特許を出願しています。
このように、具体的なセンサーやシステムがあれば、ビジネスモデル特許は取得可能です。
ビジネスモデル特許のメリット
ビジネスモデル特許を取得すると、以下のようなメリットがあります。
- 他社が同じシステムを導入できなくなる
- 自社のビジネスモデルを真似されにくくなる
- 他社が無断で同じシステムを導入した場合、特許侵害として損害賠償請求が可能
特に飲食業界では、設備投資が大きいため、ビジネスモデル特許は非常に有効な武器となります。
くら寿司が出願した特許の内容
くら寿司が出願した特許は「注文情報に基づいて報酬を付与するかどうかを決めるシステム」でした。
ポイントは、「お皿の枚数」という表現ではなく、「注文情報」という広い概念で権利範囲を設定していたことです。
なぜ広い概念で特許出願したのか?
もし「お皿の枚数をカウントして景品を出す」という限定的な表現で特許を取得してしまうと、他社が少し仕組みを変えるだけで特許を回避できてしまいます。
例えば、店員が端末で注文数を入力し、その情報に基づいてガチャガチャを回す仕組みであれば、「お皿」という要素を使わないため、特許侵害にならない可能性があります。
そのため、くら寿司は
「注文情報に基づいて景品を付与する」という広い概念で特許出願することで、他社の模倣を防ぐ戦略を取っていました。
特許にならなくても意味がある理由
実は、くら寿司のこの特許出願は、最終的に権利化には至りませんでした。
しかし、それでも十分に意味があったのです。
特許出願の公開による牽制効果
特許は出願から1年半後に内容が公開されます。
大手企業は、競合他社がどのような特許を出願しているかを常にウォッチングしています。
スシローやはま寿司などの競合他社も、くら寿司が「ガチャガチャシステム」の特許を出願していることを知っていたはずです。
もし同じシステムを導入しようとした場合、特許侵害のリスクがあります。
仮に特許が成立してしまった場合、システムを撤去しなければならず、設備投資が無駄になります。
そのため、競合他社は同じシステムの導入を躊躇せざるを得なかったのです。
特許を取得する方法は残されていた
くら寿司の特許出願は拒絶されましたが、実は権利化する方法は残されていました。
- 拒絶査定不服審判:もう一度審査をやり直してもらう制度
- 分割出願:元の出願から「子供」の出願を作り、再度審査にかける方法
しかし、くら寿司は既に市場でのポジションを確立していたため、これ以上特許を追求する必要がないと判断した可能性があります。
つまり、特許出願の牽制効果だけで十分に役割を果たしたと考えられるのです。
まとめ:飲食店が知るべき知財戦略
くら寿司のガチャガチャ特許から学べるポイントは以下の通りです。
- ビジネスモデルは、具体的なシステムがあれば特許化できる
- 特許出願するだけでも、競合他社への牽制効果がある
- 権利範囲を広く設定することで、他社の模倣を防ぎやすくなる
- 飲食業界はビジネスモデル特許と相性が良い
- 特許にならなくても、出願することに大きな意味がある
飲食店を経営されている方は、自社の独自システムや仕組みについて、特許出願を検討することをおすすめします。
特許を取得することで、他社との差別化を図り、ビジネスを有利に進めることができます。
IP FELLOWS 特許商標事務所では、ビジネスモデル特許など、ビジネスに直結する特許を最も得意としております。
・自社が生み出したアイデアを取られたくない方
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当てはまる方は、ぜひ一度ご相談ください!
👉参考動画:くら寿司『ビッくらポン!』は特許だった!? 飲食が仕掛ける知財戦略とは
