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EXITの事例から学ぶ知財戦略 | 退職代行のビジネスモデルは知財(特許・商標)で守れるか?

「退職代行」という言葉を聞いたことはありますか?

会社を辞めたいけれど、自分で伝えるのが難しい…そんな人に代わって退職の意思を伝えてくれるサービスです。

このビジネスの先駆者である「EXIT(エグジット)」は2018年に創業し、退職代行という新しい市場を切り開きました。しかし、その後「退職代行モームリ(アルバトロス社)」などの競合が次々と参入し、今ではEXITの売上を超えるほどの勢いを見せています。


せっかく生み出した新しいビジネスモデル。
知的財産(特許や商標)で守ることはできなかったのでしょうか?


今回は、退職代行ビジネスを題材に、新しいビジネスモデルをどう守るべきか、知財の観点から解説します。

退職代行ビジネスとは?EXITと退職代行モームリの違い

まず、退職代行ビジネスについて簡単に整理しましょう。


EXITは2018年創業の元祖退職代行サービスです。
退職の意思を自分で伝えられない人に代わって、会社に退職の連絡をするサービスを開始し、大きな話題となりました。


一方、退職代行モームリ(アルバトロス社)は2022年に参入した後発組。
しかし、労働組合と連携することで、より幅広いサービスを提供し、価格も抑えることで急成長を遂げています。


後発なのに売上で追い抜いてしまう…これは先駆者のEXITにとって大きな痛手だったはずです。


ビジネスモデルを特許で守ることはできたのか?

新しいビジネスモデルを生み出したとき、「これは特許で守れるのでは?」と考える方も多いでしょう。


しかし、退職代行ビジネスのような仕組みを特許だけで守るのは非常に難しいのが現実です。


ITシステムや機械など、技術が介在する仕組みであれば特許を取得できる可能性がありますが、「電話で退職を伝える」という単なる段取りやサービスの流れだけでは特許を取るのは難しいのです。


ビジネスモデル特許の代表例:いきなり!ステーキ

ビジネスモデル特許として有名なのが「いきなり!ステーキ」のステーキ提供方法に関する特許です。
お客様の希望する量をその場で計量してカットし、提供するシステムに技術的な工夫が認められて特許となりました。

しかし、このケースでも計量機や札(ふだ)など、具体的な技術や仕組みが組み込まれていたからこそ特許化できたのです。


「退職代行」という名前は商標で守れたのか?

では、「退職代行」という言葉を商標登録して、他社が使えないようにすることはできなかったのでしょうか?


実は、「退職代行」という言葉を商標登録するのも難しいのです。


その理由は、「退職代行」がすでに普通名称化(一般的な言葉として定着)してしまっているためです。商標は、独自性のある名前やロゴに対して認められるもので、すでに一般的に使われている言葉を特定の企業が独占する登録は困難でした。


EXITが取るべきだった商標戦略とは?

では、EXITはどうすればよかったのでしょうか?

もっと独自性のある名前で商標を取得する戦略が有効だったと考えられます。

例えば以下のような名前です

  • 「退職請負人」
  • 「退職エージェント」
  • 「退職コンシェルジュ」


たとえば「転職エージェント」の裏返しとして「退職エージェント」というネーミングが広まれば、その企業だけが使える強力な武器になったはずです。


また、「ロゴ+退職代行」という形で商標を申請するのも一つの手です。
特徴的なロゴと組み合わせることで、「退職代行」という言葉も含めて商標として認められる可能性が高まります。


EXITが実際に取った対策

では、EXITは競合が増える中でどう対応したのでしょうか?

実際には以下のような施策を行いました。

  • 業界最安水準への価格調整
  • 退職後の転職支援などサービス内容の拡充
  • 弁護士監修をアピールして安心感の訴求

つまり、知財で守り切れない以上、サービスの品質やブランディングで勝負する方向にシフトしたのです。


まとめ:新しいビジネスを始めるときに知っておくべきこと

退職代行ビジネスの事例から学べるポイントは以下の通りです。


ビジネスモデル自体を知財のみで完全に守るのは難しい

サービスの流れや仕組みだけでは特許にならず、普通名称化した言葉は商標にもなりにくい。


独自のネーミングやロゴで商標を取得すべき

「退職代行」ではなく「退職エージェント」のような独自性のある名前で商標を取っておけば、他社との差別化ができた。


早い者勝ちの世界

知的財産は「先に始めた」ではなく「先に申請した」が重要。
サービスを開始したら、すぐに商標出願を検討すべき。


知財だけでなくサービスの質とブランドが重要

知財で守り切れない部分は、サービスの品質やブランディングで差別化を図るしかない。


新しいビジネスを立ち上げる際は、サービス開発と同時に知財戦略も考えることが大切です。
「この名前、流行りそうだな」と思ったら、すぐに商標調査・出願を検討しましょう。




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👉参考動画【今話題】退職代行ビジネスは商標特許で守ることができたのか


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