【ラーメン「一蘭」】ラーメン店舗のビジネスモデル特許を解説!
とんこつらーめんで人気の「一蘭」というお店があります。皆さまの中にも、お好きな方がいらっしゃるのではないでしょうか。
「一蘭」をご利用されたことがある方はご存じかと思いますが 「一蘭」のお店の特徴として、お客さんがラーメンの味に集中できるよう、座席が間仕切りで仕切られています。さらに、一蘭のお店では、座席に座ったお客さんに対して、お店の従業員が素早く接客できる工夫がされています。
「ラーメン店での接客は、お店の従業員が着席したお客さんを見て接客しにいくという単純なものじゃなかったっけ??」
実は、「一蘭」では、店内で着席したお客さんを従業員が素早く確認するための工夫について、特許を取得しています。
今回は、ラーメン「一蘭」の店舗システムのビジネスモデル特許について、実際の特許文献を見ながら解説したいと思います。
1.どんな製品・サービスの特許か
- 発明の名称:店舗システム
- 特許権者:株式会社一蘭
- 特許番号:特許第4267981号
一蘭のビジネスモデル特許は、ラーメン店で、お客さんの入店や退店に加え、着席なども簡単に把握できるシステムについての特許です。
このシステムを使うと、お客さんにとっては、自分にとって必要なときにだけ、お店の従業員と接触すればよいので、煩わしさがなく、食事に集中することができるというメリットがあります。
なお、ビジネスモデル特許とは、ビジネスモデルと大きく関わる特許のことをいいます。
ビジネスモデル特許について、「いきなり!ステーキ」を例に記事を書いているので、気になる方はこちらの記事も参考にしてみてください。
2.業界で従来使われた技術(背景技術)
特許文献には、通常、「背景技術」といって、従来、その業界でどのような技術が使われているかが必ず記載されています。
背景技術としては、お客さんが、寿司屋の店員と直接関わることなく、手軽に寿司をオーダーできるシステムが記載されています。
具体的には、注文したい品目を入力するためのタッチパネルをお客さん側に設置し、お客さんが入力した品目を表示して確認するためのタッチパネルが厨房側に配置されている、オーダーシステムです。
このオーダーシステムにより、お客さんは、店員を通さずとも、いつでも好みに応じた注文品のオーダーを随時行えるとともに、受け手である店側はそのオーダーを即座に確認して調理することができます。
寿司店舗のカウンターの図(※特開平11-318680号公報の図4から引用)
3.背景技術の課題
背景技術のシステムは、お客さんと店側の従業員は、顔を合わせることがなく、直接会話して意思伝達する必要がないため効率的にオーダーできる、ということがメリットではありますが、
問題点としては、店側からはお客さんの状態が全く分からない上、お客さんとしても、まるで自動販売機で調理品を購入しているような味気ない感覚になりやすい、と記載されています。
お客さん側としては、あくまでもお客さんの立場を尊重されながら、なおかつ従業員との無駄な関わりがなく、しかも周りのお客さんに気を遣うことなくマイペースで食事に集中できるお店を望んでいました。
店側としては、お客さんの要望に応えつつ、効率的に接客できるシステムを提供したいのですが、そのようなシステムは従来存在していませんでした。
4.特許の内容(特許権の範囲)
一蘭の特許発明の内容(特許権の範囲)について、以下に簡単に説明します。
特許権の範囲は、特許文献の「特許請求の範囲」という部分に、以下のように記載されています。
- カウンターを複数の間仕切りで仕切ってあり、
- 店舗の出入口に設置された客の入店及び退店を検知する入退センサと、
- 客席に設置された客の着座及び離座を検知する座席センサと、
- 客席に設置された、客から店舗側へ意思表示する連絡スイッチと、
- 少なくとも接客済みか否かを入力可能とした座席情報入力スイッチ(第1ボタン、第2ボタン)と、
- 座席センサの検出結果、連絡スイッチ及び座席情報入力スイッチからの入力結果に基づいて座席状態を表示する客席情報出力器(第1ランプ、第2ランプ、第3ランプ、スピーカ)と、
- を兼ね備える、店舗システム。
めちゃくちゃわかりにくいので、具体例を説明しますと、
例えば、「一蘭」の店舗に入店したお客さんが着席すると、座席に仕込まれたセンサがお客さんの着席を検出し、
厨房側に設置されたランプ(お客さんからは見えない)が点灯したり、厨房に配置したスピーカからチャイムが鳴ったりすることが記載されています。
これにより、店舗の従業員は、厨房側からお客さんが見えなくても、お客さんが着席したことを知ることができます。
そして、点灯するランプの状態(点滅させたり、色を変えたり)によって、お客さんの状態(既に注文したかなど)を把握できるようにしてます。
このようにすることにより、間仕切りで仕切られてお客さんの顔が見えない状態であっても、お客さんの状態(既に注文したか、トイレで離席しているかなど)を正確に把握することができ、必要最低限の接客で済ませることができる。
そのため、お客さんは、お客さんの立場を尊重されながら、なおかつ従業員との無駄な関わりがなく、しかも周りのお客さんに気を遣うことなくマイペースで食事に集中できることができます。
5.まとめ
今回の特許のシステムは、お客さんが最低限の接客を受けつつ、人の目を気にせずにラーメンを食べるのに集中することができるためのシステムでした。
座席センサや、ランプ、スピーカーなど、各々は普通の装置でも、組み合わせることで、独創的なシステムを創作した場合は特許になります。
そして、「一蘭」のような、ビジネスモデルに直結するシステムの特許(ビジネスモデル特許)を押さえることで、非常に大きな参入障壁となります。
「一蘭」のシステムのような、競合他社にマネされそうなシステムの特許は、模倣の抑止力になるので、競合他社にマネされたくない方はぜひ特許権を取得してください。
また、逆に、自社の製品・サービス・システムが他社の特許権を侵害していないか不安なときは、弁理士に相談してみてください。
IP FELLOWS 特許商標事務所では、ビジネスモデル特許など、ビジネスに直結する特許を最も得意としておりますので、
- 自社が生み出したアイデアをパクられたくない方
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は、ぜひ一度ご相談ください!
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