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ソフトバンクの特許戦略が異常!1万件出願の裏側とAI時代の知財戦略を徹底解説

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「1万件の特許出願って、本当に可能なの?」 ──そう驚いた方も多いのではないでしょうか。


本記事では、ソフトバンクが2023年にわずか数ヶ月で実施した驚異の特許戦略を起点に、AI時代における企業の知財戦略、特許出願の実態、そして弁理士業界の変化までを分かりやすく解説します。

経営者や開発者が知っておくべき、これからの特許戦略のヒントが詰まっています。

ソフトバンクが1万件出願した衝撃の事実

2023年、ソフトバンクはわずか2〜3ヶ月の間に約1万件もの特許を出願しました。
この数字がどれほど異常かというと、トヨタ自動車でさえ年間約6,000件程度。つまり、ソフトバンクは日本を代表する製造業の年間出願数を、たった数ヶ月で上回ったことになります。


この大量出願は、単なる量の勝負ではなく、AI時代における新しい特許戦略のモデルケースとして注目されています。

参考:特許庁「特許行政年次報告書」
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/index.html


1万件出願にかかる投資額

特許出願には相応のコストがかかります。1件あたりの出願費用を約30万円と仮定すると、1万件で約30億円という莫大な投資額になります。


これは単なる出願費用であり、この後の審査対応や権利化、維持費用を含めればさらに膨らみます。それだけの資金を投じてでも、ソフトバンクがこの戦略を選んだ背景には、AI市場における先行者利益の確保という明確な狙いがあると考えられます。


なぜ1万件も出せたのか?AI活用の実態

出願書類を詳しく見ると、以下のような特徴が見られます。

  • 特許図面の流用:似たような技術図面の有効利用
  • 文章の流用:共通する説明文が複数の出願に使用されている
  • AI生成の活用:生成AIで作成したと思われる文章構成

つまり、テンプレート化 × AI生成 × 大量組み合わせによって、短期間での大量出願を実現したと推測されます。


1万件出願後の選別プロセス

重要なのは、1万件出願したからといって、全てが特許になるわけではないという点です。

ソフトバンクの戦略は以下のようなプロセスです。

  • まず1万件を一斉に出願(市場を広く押さえる)
  • 市場動向やビジネス展開を見ながら有望なものを選定して出し直す
  • 選ばれた約900件を本格的に権利化する

これは「広く網を張り、価値のあるものだけを育てる」という、いわば特許版のスタートアップ戦略です。

出願後の「出し直し」とは?

「一度出したものを修正できるの?」という疑問もあるでしょう。

実は、出願から1年以内であれば、内容を追加・修正して出し直せる制度があります(優先権といいます)。


ソフトバンクが出し直した書類は、通常おおよそ150段落程度の出願書類の20〜30倍の分量、1つの出願で約2,000段落にも及ぶものもあったと言われており、これはおそらくAIで補足記述した結果と考えられます。


アイデアコンテストから生まれた特許戦略

この1万件出願の背景には、2023年9月頃にソフトバンク社内で実施されたアイデアコンテストがあります。

テーマは「ChatGPTや生成AIを使ってどんなビジネスが展開できるか」。
社内から集まった多数のアイデアを、特許出願に結びつけたのです。

この手法の利点は以下の通りです。

  • 現場の声を即座に知財化できる
  • 市場トレンドに即応できる
  • 社員のモチベーション向上にもつながる

従来の「研究開発部門が発明する」というスタイルから、全社で知財を生み出す体制へのシフトとも言えます。


では、具体的にどんな分野の特許が出願されたのでしょうか?
出願内容を分析すると、ほぼ全てが生成AI関連で、以下のような分野に集中しています。

  • 医療関係のサービス
  • 法律相談サービス
  • オフィス系システム(カレンダー機能、リマインダー、議事録作成など)

いずれも「生成AIを活用したサービス系特許」であり、ハードウェアではなくソフトウェア・サービス領域に集中しているのが特徴です。


AI時代の弁理士業界と特許実務

生成AIの登場は、特許業界でもすでに大きな変化をもたらしています。

例えば

  • 出願書類の作成にAIを活用する事例が増加
  • 先行技術調査の自動化・効率化が進む
  • 特許戦略そのものが「量 × スピード」重視にシフト

などが挙げられます。


ソフトバンクの事例は、まさにAI活用による特許実務の効率化を象徴するものであり、今後はこうした手法が他企業にも広がる可能性があります。


まとめ

ソフトバンクの1万件出願から見えてくるのは、以下のようなポイントです。

  • AI活用で特許出願の「量産」が可能になった
  • 市場を広く押さえてから選別する戦略が有効
  • 社内アイデアを即座に知財化する体制が重要
  • 特許戦略そのものがスピード勝負の時代に突入
  • 弁理士業界もAIで大きく変わりつつある

これからの時代、特許は「取るか取らないか」ではなく、「どれだけ早く、どれだけ広く押さえるか」も勝負になります。

特に生成AIやSaaS系のサービスを展開する企業にとって、ソフトバンクの事例は非常に参考になる戦略モデルと言えるでしょう。


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👉参考動画:【驚愕】特許出願1万件!?ソフトバンクだけがやってるAI時代のヤバい特許戦略とは?


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