【通販の虎で話題!】スマートバスマットの特許戦略をプロが解説

「通販の虎」で話題となった「スマートバスマット」の特許戦略の解説記事です。この製品は、わずか5日間で3000万円の売上を達成したとされています。
今回は、体重管理の新しい形を提案するスマートバスマットについて、その特許取得の経緯や、知的財産専門家による戦略的分析を、特許文献を見る時のような構成で解説します。
1.どんな製品・サービスの特許か
スマートバスマットは、体重計とバスマットが一体となった製品です。
この製品は、生活習慣の動線に体重測定の機能を組み込むことで、ユーザーが毎日自然と体重が測れるようにすることを目的としています。
通常の体重計とは異なり、この製品にはディスプレイがついておらず、測定データは「何キロ」という情報として記録されるのみです。測定データはすべてクラウドに送られ、アプリ内で自分ではない他人(親など)のデータも確認できる機能がある点が特徴です。
なお、このスマートバスマットの開発者は「スイカゲーム」の開発者と同じ人物であります。特許についてはPCT出願(国際出願)がなされており、日本ではすでに特許化されています。
2.業界で従来使われた技術(背景技術)
特許文献における背景技術に相当する点として、従来の体重計は、日本の家庭に広く普及しているにもかかわらず、実際にはあまり使用されていないという現状がありました。
また、特許審査の過程で、先行技術として、台湾の会社が開発した**「マット式体脂肪計」**(マットと体脂肪計を組み合わせた発明)の存在が示唆されました。
3.背景技術の課題
従来の体重計は、家の中に存在するものの、「乗られてない」(使われていない)という課題がありました。
開発者はこの課題を解決するため、利用頻度の高いバスマットに機能を持たせることを着想しました。
さらに、開発者が個人的に体調を大きく崩した経験から体重管理の重要性に気づいたこと、そして、中国に住む父親が体重が減っていることに気づきながらも手遅れで亡くなってしまったという経験から、「もし体重の変化に気づき、アラートなどができていたら、そういったことはなかったかもしれない」という後悔があったことが、この開発に着手する大きな動機となっています。
4.特許の内容(特許権の範囲)
スマートバスマットの特許化にあたっては、当初「給水性能を有するバスマットに4つの電極がある」というシンプルな内容で申請されましたが、先行技術(マット式体脂肪計)との関係から新規性がない旨が指摘されました。
そして、特許を取得するため、出願内容に以下の技術的な内容を限定しました。
• 歪みを検知するセンサーを付け加える。
• このセンサーにより、体重計に人が乗れているかを検知する。
• 適切に乗れていない場合、そのデータは除外する。
この機能を追加補正した結果、特許が認められました。
5.まとめ
スマートバスマットは、体重管理の課題を日常生活の導線に取り込むという発想と、家族の健康を見守りたいという開発者の強い動機(上司/親などのデータをアプリ内で見れる機能)が結びついた製品です。
特許戦略の観点から見ると、現在、ハードウェアに関しては「給水性能を有するバスマット」に関する特許が1件取得されています。しかし、1件の特許のみで製品全体を守ることは珍しいため、もっと多様な観点からハードウェアの特許を取得できなかったかという点は気になります(もちろん予算の関係もあったかと思います)
また、もう一つの重要な観点として、データ活用によるビジネスモデル特許を取得できる可能性はあると思います。
取得した体重データをAIに入れて快適な食事を提案するなど、データを利用したビジネスモデル的な側面での特許化も検討に値します。
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